fast思考とslow思考
営業に一番大事なスキルは、“考える力”だというのが私の持論だが、
“考える力”とはどのように意識し、伸ばすのか。
ここについて書いていきたい。思考方法も、技術である。
思考のし方について、二つの真逆の思考パターンがある。“fast思考”と“slow思考”である。
このfast思考(ファスト思考)とslow思考(スロー思考)というのは2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者ダニエル・カーネマンの提唱する理論である。
①fast思考
→直感や感情などから生まれる考えのことである。不安定な感情に左右されるものであり、顧客志向ではなく自分主義である。Give か TakeでいうとTake。このような思考パターンだ。
仕事に置き換えると、、
・どうやったら気に入られるか(媚びを売ることを考えてしまう)
・どうやったら買ってもらえるか(言いくるめることを考えてしまう)
・どうやったら改善できるか(悪いところ探しになってしまう)
などだ。
②slow思考
→本質を捉え、合理的な考えである。fast思考と逆で、感情に左右されず安定しており、自分より相手のことや社会に目を向ける。Give と TakeでいうとGive。このような思考パターンだ。
仕事に置き換えると、、
・自分の価値観を相手に与える(損得では無く自分をさらけ出し、相手に信用される)
・良いところを見つけて伸ばす(相手に安心と信頼を与え、好感を得られる)
・自分が学ぶ(説得するのでは無く自信が気付きを得る、という姿勢はかわいがられる)
などである。
営業活動においてどちらが良いかは一目瞭然である。
当然、slow思考だ。
fast思考の弊害としては、
・攻撃的思想
・偏見
・負の拡大
などを生む。
fast思考が悪いと言いたいわけではなく、
直感的な判断により本来抱かなくてもいいはずの不合理な判断を下してしまうのが危険であると主張したい。いわゆる消費者脳であり短絡的である。
意識していないと人は誰しも無意識にfast思考に陥ってしまうため、その傾向を知っておく必要がある。
何かを顧客にGiveし、長期的な目線でかつ合理的な判断で物事を捉える。一旦、消費の主体を自己から相手や社会に向けてみよう。
すると、すぐには結果に跳ね返らないかもしれないが、必ず状況は好転するだろう。
現代の資本主義による“消費社会”はまさにfast思考の塊と言える。
このような環境下において、一度足を止めてポジティブに、合理的に、Giveを意識した思考を心掛けてみて欲しい。そうして、自分だけでも無く顧客だけでも無く、“顧客と一緒に”成長し、Win-Winの関係を気付いた先に、売上拡大と自社への貢献・社会への貢献も自ずと生まれる感覚を掴めるのでは無いかと考える。
GAPで期待値コントロール
不良が善行をすると、ものすごく評価が上がる。褒められる。モテる。
これは誰もが知っていることではないか。
これが期待値コントロールに応用できる。
もちろん私は不良ではないが、ここから着想を得て営業活動に活かした。
このギャップを自ら作り出すセルフブランディングのし方と、注意点をお伝えする。(顧客に何度も顔を合わせるルート営業に非常に有効)
【私の事例】
①見た目でインパクトを残す。
・スーツを少し派手にする
・ネクタイ、ビジネス小物で個性を出す。
・健康的に見えるよう少し日サロで肌を焼く
などなど。
※お洒落感や清潔感は大事にしつつギリギリのラインを攻める
→”デキそう”と好評or”チャラそう”と不評かのどちらかの印象を持たれる。
②初商談の際には極めて謙虚に、物腰柔らかく、下から下からの姿勢を貫く。
(GAPその1、「え、意外。。」と思わせる)
・1トーン高い声で話す
・少しゆっくり喋る
・絶対にプッシュしない
→見た目とのGAPで顧客は少し拍子抜けする。”え?”と印象に残る。下手をすれば少し”気になる”くらいに思われる。
③2回目~、要点は押さえつつ”少し馬鹿なふり”をする。
(GAPその2、「あ、でもやっぱり見た目通りかな?でも憎めない」と思わせる期)
・趣味、遊び、時事ネタ等、顧客の食いつく話題で警戒感を解き、人対人の関係性で仲良くなる
・よく笑う
・失敗ネタで笑いをとる(自己開示)
・仕事関連の話は先方がニーズを見せたときのみ、適切に対応(勉強は怠らない)
※ここでも絶対プッシュしない
→信用は出来る。ただ、”ちょっとアホなのかな”くらいに思われる。
自分の弱みをさらけだし相手の警戒心を解きながらも良き相談相手に徹する。ここでニーズ把握。
④ニーズを把握し、打ち解けたら営業モードへ!
(GAPその3、「あ、でもやっぱり営業モードになったらこいつ、すごいな!」と思わせる期)
・ニーズに合致した提案をする
・否定的反応も準備通り余裕でハンドリング
・最後はがっちりクロージング
→関係性もできており、メリットも感じられる。信用しているし、彼なら大丈夫だろう。と思われる。
お気づきだろうか。GAPは二回作っている。下げて→上げて→下げて→上げる、と言った具合に。
不良の善行理論、恋愛でツンデレが相手の心を弄ぶ理論と同じ、いや、そのバージョンアップである。
さらには、チャンス到来まで爪を隠すことにより、
アイドルオタクの心理と同じように、”自分が成長させてやっている”感を持たせる事にもなる。
”意外!”と思わせるところがポイントである。が、失礼は無く、信頼も得ながら、というのが前提である。
相手を油断させ、期待値を抑えつつ、チャンスで全力を出す。
むしろ、チャンスをこちらから作りにいくのである。
はじめから”しっかりしているな”と思われても、普通の提案では”まぁそうだよね”程度にしかならない。
高低差をつけることで心理ハードルを下げ、より高く跳んだように感じさせるのだ。
各個人のキャラクターによる部分もあるが、原理原則として非常に有効である。
各人にあった形で応用していただければ幸いである。
インサイト営業とは
インサイト営業とは
インサイト営業(インサイトセールス)をしていくには、大きく分けて以下の4つの能力が必要である。
である。
①リサーチ
これはR-PDCAと別の記事でも書いたように、最も大事な基本である。
全ての商談のスタート地点は顧客を調べ上げ、よく知る事である。
有意義な情報が少なければ分析もできない、仮説も生まれない。
そうなれば商談で相手に刺さる話ができる確率は極めて低くなる。
市場データ以外でも、インターネット、ブログ、新聞、FaceBook、Twitter、本(論文)などはくまなくチェックすべし。
その人の趣味や、家族構成、出身地、持ち物、思想、興味のある話題がわかれば上出来である。
②分析
情報を集めたら分析である。
できるだけファクトで数字を集め、傾向を統計的にとりたい。
ある程度の企業では市場データくらいは手に入るのではないだろうか。
数字を眺める時間は長ければ長いほどよい。(よほど天才で無い限り)
市場データは、毎日眺め、毎日「こういう傾向があるかもしれない」、「ここのシェアが先月上がっている原因はあれか」、「今月動きが鈍いのはあれのせいだな」
などと考えているうちに新たな角度から考察できる瞬間がある。
これは精神論に近いが、こればかりは数字を読めるようになるには時間が必要なのである。
たとえて言うならば、競馬やパチンコの予想に近いかもしれない。または気候と潮の流れを読む釣り人の感覚に近いとも言えるかもしれない。
③仮説思考
データが集まったらひたすら頭の中でそれぞれを組み合わせる。
「こう言ったら刺さるかな」、「こうしたら喜ぶだろうな」、「こういう情報を求めているはず」といったシンプルな仮説ができあがる。
どんな営業マンでも考えることだろうが、この仮説の精度はケタ違いである。
ちなみに自慢だが、僕はルートセールス時代、会社から「1日に10軒訪問しなさい」と言われていた。
しかし僕は実際、平均で4~5軒程度しか訪問していなかった時期が多かった。(もちろん、力を入れる時期には活動量重視にしていた時もあるが)
それでも実績は人より圧倒的に良かったし、競合他社は「あいつはいつもいる」と警戒されていた。
いつ、どこに行き、誰に会うのが効果的か、熟知していたので生産性が極めて高かったのだ。そして実際、他の誰より売れていた。
④質問力
どれだけ精度の高い仮説を持っていても、それを真正直に商談で顧客にぶつけてしまっては宝の持ち腐れである。
インサイト営業では、「重要な事こそ質問する」スタイルであることを心掛けなければならない。
顧客は、営業マンから教わって嬉しいわけが無い。自分で気付きたいのである。
たとえそれが、わかりきっているほどの仮説だったとしても、"あくまで仮説"として質問し、相手自身に気付かせるのである。
それが相手の自尊心の保護にもなるし、気付きを得た喜びにも繋がる。
なのでインサイト営業では基本的に強いクロージングを必要としない、と僕は考えている。
ぜひ、ここまでマスターし、楽しく幸せな営業マンライフを送る人が一人でも増える事を切に願う。
ソリューション営業からインサイト営業へ
近年、ソリューション営業(課題解決型)は終焉を迎え、インサイト営業(課題発掘型)の時代へ突入している。
最新の営業手法はインサイト営業(インサイトセールス)である、と様々なところで話題となっている。
たしかにこの概念自体は新しいかもしれない。しかし、本質的には何も新しくなく、多くのトップッセールスはこの手法によって圧倒的な実績を築いてきたのでは無いだろうか。
インサイト営業とはどのような手法かというと、言葉の意のごとく、まだ表面化していない顧客の意識を読み解いていく営業スタイルである。
一方、ソリューション営業とは、顧客のニーズに合致した製品(ソリューション)を提案していく営業の事である。
かつてのプッシュ型(押し売り)営業の時代が終わり、ソリューション営業の時代が来た。
これは、顧客のニーズを正しく把握しなければ顧客は振り向いてくれないと言うことの表れである。
それからまもなくし、欲しい物はほとんどインターネットで調査し、自分で自分のニーズに合致した物を見つけ、ネット上で変える時代が来てしまった。
すると、ソリューション営業のような、「顕在化しているニーズ」を満たすような営業などもはや不必要となってしまう。
こうして世界の営業マンは少しずつだが確実にテクノロジーに置き換わられ、数を減らしていくだろう。
このIT化の驚異におびえている営業マンも多いのでは無いだろうか。
この、テクノロジーに置き換わられない営業マンが、インサイト営業をできる人間である。
インサイト営業では顧客の「まだ顕在化していない=潜在的なニーズ」を発掘し、「顧客と共に、あるべき姿へと歩むパートナー」となれるのである。
まだ自分でも気付けていなかったことを教えて貰い、新たな視界が開けたとき、顧客の心は動く。
気持ちは高揚し、相手を信頼する。これをできるのがインサイト営業を実施できる営業マンであり、
絶対にテクノロジーには置き換えられない人間ならではの心の通ったビジネスなのである。
これからの時代に営業職として生き残りたければ、「潜在的なニーズ」を掘り当て、解決できる存在であり続ける事である。
その為には、優れたリサーチ力と分析力、仮説構築力、質問力が必要となる。
この、インサイト営業のエッセンスについてはまた別の項で触れよう。
営業におけるPDCAのかたち
一番大事なのは、【事前準備】です。
"R"はReserch、すなわち調査(情報収集)です。
これだと将来、AIやロボットに代替されてしまいます。
ですから、"R"で入念に情報収集を行う必要があります。
計画であると同時にこれは【仮説】です。
手持ちの情報をもとに、「こうしたら成功するかな」という仮説を構築します。
一般には「評価」と言われます。
トライアルクローズにて検証し、満たせていなかったニーズを洗い出す作業となります。
トライアルクローズの段階では顧客もニーズを満たしきれていないことが多く、断られます。
その、「断った理由」の中に、【真のニーズ】が秘められている可能性が高いのです。
そのニーズが何なのかを徹底的に深堀りし発掘しましょう。
そのため、いかに商談前に精度の高い仮説を立てられているかが勝敗の分かれ目となります。
なので、PDCAサイクルを少ない回数の回転で済ませるために"R=Reserch"がキモとなるのです。
営業力は人間力
ここでは、【人間としての本質的、総合的な魅力】と定義します。
ただ、"人間力"こそが、最もその人の価値観や人生観を反映するコアスキルです。
・自分の仕事、人生、自分自身に誇りを持つ
・人やモノについて幅広い知識と興味がある
・謙虚でポジティブである
・向上心の強さ
・高い教養
・高いコミュニケーションスキル
・気遣い、思いやり
上記のいくつかに共通していることです。
よく聞く言葉かもしれませんが、「自分を売れないやつは商品も売れない」のです。
楽しそうに生きている人の周りには人が寄ってきますし、顧客も興味を持ち、憧れるか、共感してくれます。
Live my life. です。
自分と向き合い、仕事もプライベートも全力、これが一番です。
そして顧客の夢やビジョンを聞いて、語り合いましょう。そうすると、自然と尊敬や共感が生まれます。
それが難しいのです。
営業で成功するために一番大事なスキル
・Techenical skill
誰でもできるようになります。
そんなに甘い顧客はそうそういないでしょう。
言うなれば、自分で正解を見つける能力です。
例えば、
・天候によって訪問ルートを変更する
・時期によって提案する内容を変える
私が製薬会社で開業医(クリニック)を訪問し営業していた際、
人気のクリニックで患者さんが途絶えず、訪問してもなかなか面会(商談)してもらえないお客さんがいました。
→天候が崩れると、「まあ、今日は天気が悪いから明日でいいか」と客足(患者さん)が遠のく為、空くので会いやすい。
・天気が悪いから訪問した旨、顧客に敢えて伝える
→相手は「わざわざこんな時に有り難う」という気持ちになる上、「でもなぜ敢えてこんな日に?」と疑問に思う。
・「いつもお忙しいので、こういう日が一番お邪魔にならないかと。」と伝える
→"自分は大事にされているんだ。自分のことをいつも気遣ってくれている"と感じ、好意を持っていただける。
・上記を繰り返す
→"雨が降ったからあいつがくる"と無意識に刷り込まれる。気に入られる。
→商談がスムーズに進む。
→売上が上がりやすくなる。