嗅覚は磨ける
「営業はセンスだ。」
これはとある大手証券会社の元トップセールスと対談した際に彼が言っていた言葉である。
センスとは?
才能なのか。
今ひとつ論理的に説明が付かない。
そこでディスカッションしていくうちに、”センス=チャンスやピンチをかぎ分ける嗅覚”ではないか、と定義された。
では嗅覚とは何か。
嗅覚を要素分解すると、、
①観察力
②洞察力
③想像力
となると私は考える。
実際の営業活動に落とし込んでみよう。
①観察
商談前、顧客の事を徹底的に調べる。その人はどのようなバックグラウンドを持ち、どのような人なのか。売りたい物に対する興味がありそうか、資金は豊富か、決定権を持っているのか、人間関係はどうか、などである。
また商談中は、どのような話に食いつくのか、持ち物の趣味はどうか、癖は何か、楽しいときや怒っているとき、喜んでいるとき、焦っているとき、イライラしているときにどのような表情をするのか、どのような行動を取っているか、など。
つまり、目で見て得られる(可視化できる)情報である。これが観察であり、この情報をいかに細かく正確に収集出来るか、である。
人より情報を持つ者が勝つ。
②洞察
英語で言うinsightである。
表面的に目に見えるものではなく、もっと深層にあるものに対する理解のことだ。
例えば、なぜこの人は今、怒ったのか?その理由を理解することが洞察だ。
もっと簡単なを挙げると、
・顧客が商談中に時計をちらちら見ている。
→”時計を見ている”と気付くのが観察。
→なぜ時計を見ているんだ?「何かこの後予定があって急いでいるんだ」と理解するのが洞察。
このように考えると非常に簡単だが、商談中の顧客の行動は無限にある。その中で、どこに目をつけ、どう理解するか、が重要である。
③想像
お気づきだろうか。この3つのポイントは時系列である。
目で見える物をしっかり見て観察し、その理由まで見通し、その後、想像する。
想像とは、今ある情報を元に、”自分がこうしたら相手はどう反応するか、どう思うか”という想像である。いわば仮説構築力でもある。
上記の例では、
・毎週月曜日はよく時計を見ている
→つまり月曜はこの後の時間に予定を入れているのかな。
→ということはいつもより30分アポイントの時間を早めよう。
→そうしたら商談に集中してもらえるな。
→その気遣いをサラッとアピールしたら気遣いに喜んでもらえるかな。
などと行動に落とし込む。
質の高い観察と洞察があれば、精度の高い仮説が立てられる。
つまり”こういう話を、このタイミングで、こういう言葉のチョイスで話したら、きっとこの人は買ってくれる”という想像をする。ストーリーを描くことが出来るのだ。
この3つの能力を磨くことが出来ていれば、顧客の反応や市場のアクションに対し競合より早く、正しい対応が出来る。これが、一般に”嗅覚がある”営業マンの実態である。
これを人は”センスがある”という一言で片付け、才能のせいにし、論理的に解釈し努力することを諦めているのでは無いだろうか。
是非、これを知った方は日頃から顧客をよく観察し、顧客を誰よりよく知り、精度の高い仮説を構築する癖をつけPDCAを回していって欲しい。業績は大きく飛躍するだろう。